
目指したのは“飛行機と同じぐらい主役になれるチョコレート”。オリジナルの機内販売品に対するZIPAIRの考えとは。
こんにちは。ZIPAIR note編集部です。
ZIPAIRの機内で販売しているオリジナルチョコレート「Z_CHOCOLATE」は、まるでセレクトショップに置いてあるようなスタイリッシュなデザインでチョコレートの箱としては実に斬新です。
その商品開発の舞台裏を、チョコレートの企画や製造コーディネートを行うセブンアールコンフェクショナリー・前田さんと企画から携わってきたZIPAIR・五木田にインタビュー。その一箱、一粒には、ZIPAIRとしてあるべき姿を模索した作り手の想いが詰まっていました。
プロフィール/前田奈那(セブンアールコンフェクショナリー代表取締役)
JAL勤務を経て、2016年にセブンアールコンフェクショナリーを設立。翌年に自社ブランド「ショコラ・ダ・ファミリア」を展開。そのほかチョコレートの企画、販売、製造コーディネートも手がける。
プロフィール/五木田 忍(ZIPAIR)
2014年にJALロイヤルケータリングに入社。機内サービス、機内販売品などの開発プロジェクトに携わったのち、ZIPAIRに出向。機内販売品や機内食などの企画・製作を担当する。
チョコレートから紐解くZIPAIRらしさ。
―オリジナルのチョコレートを製作することになった、きっかけを教えてください。
前田:私の会社は、チョコレートブランド「ショコラ・ダ・ファミリア」を企画・販売しているのですが、JALの社員さん向けに販売するため同社を訪れていたんです。そこで偶然にも出会ったのが、ZIPAIRの取締役であり元上司の深田さんでした。実は私、元々JALで働いていたんです。
再会したのはZIPAIRが誕生する前のことで、お互いの仕事について話していた時に「新しいエアラインを立ち上げるにあたり、チョコレートでオリジナルの機内販売品を作れないか」というお話をいただいたのがきっかけです。
―なんと! それはまさに縁ですね。そこから五木田さんにつながったと。
五木田:当時、数名のチームで機内サービスや販売品の企画を練っているところでした。
「ZIPAIRのオリジナル商品は、ZIPAIRでしか作れないものにしたい」という想いがあり、それだけにサプライヤーさまとの意思の疎通がとても重要です。元々関係性のある前田さんとの出会いは、まさに渡りに船でした。
―前田さんは、これまでにないLCCとして「NEW BASIC」を掲げるZIPAIRの理念をすぐに理解できましたか?
前田:なにせ就航前ですからね……。
製造を手がけるのは私の親族が経営する関連会社で、京都で70年以上チョコレートを作っている、いわば老舗。「しっかりと土台を構えつつ、そこから時代をリードする新しいチョコレートを作っていかなければ」という想いがあり、そこはシンクロすると感じました。
―いざ製作するにあたっては、どのようなテーマで考えたのでしょうか?
五木田:機内販売品としてチョコレートはいわば定番。さまざまなエアラインでラインナップされています。しかし「ただ高級感をうたったものや、チョコレートブランドを全面に押し出したものでは意味がない」と私たちは考えていました。
前田:私もそれは感じていて。だから「美味しいだけじゃなく、箱を見た瞬間、開けた瞬間に驚きやプレミアム感を与えられるものにしたい」と思いました。
その時、ふと思い出したんです。30年も前ですが、飛行機のチョコレートを作っていたことを。そこでZIPAIRさんに「飛行機の形をしたチョコレートにしてはどうか」と提案しました。
五木田:その案を聞いた時は嬉しかったですね。
でも、単に飛行機の形を模しただけではZIPAIRらしさは伝わりません。さらにオリジナル性を高めたいと思いました。
試行錯誤の結果、たどり着いた理想の形。
―それが、このボーイング787型機の形をしたチョコレートですね。
五木田:はい、ボーイング787型機はZIPAIRが採用する機体とあって、いわば象徴的な存在です。「ぜひこれを再現したい」とお願いしました。ただそれが思った以上に大変だったようで……。
前田:ベースの形を作るところまでは、すんなりといったんです。でも、ボーイング787型機らしさをもっと突き詰めよう、と。
五木田:ボーイング787型機は、曲線美が魅力の機体なんです。これを再現するのは困難だろうなとは思ってはいたんですが、飛行機好きのお客さまにも認めていただけるような形になんとか近づけたかったもので。
「Z_CHOCOLATE」は3種類の味が1個ずつ入っており、多くの人から愛されることを目指してベーシックな味に仕上げられている。ミルクチョコレートはコクを感じられる甘さ、抹茶チョコレートは宇治の抹茶を使用し濃厚な味わい、ホワイトチョコレートはあっさりしたほどよい甘さ
前田:もちろんそのまま再現することはできないので、ポイントを押さえてデフォルメしました。ノーズの形もちゃんと特徴を捉えていると思います。コックピットの窓もありますし、翼にはZIPAIRのロゴと機体番号まで入っているんです。
でも一番見て欲しいのは翼。ボーイング787型機の翼は、先端に向かってカーブを描くようにゆるやかに上向きになっているんです。そこもちゃんと再現しました。
五木田:そうなんです。ここがとても重要なんです(笑)
―形状が複雑になると、作る際に苦労したのでは?
前田:作る時も大変でしたが、頭を悩ませたのがプラスチックの保護カバーを使えないことでした。
通常、複雑な形のチョコレートには、運搬中に壊れないようにプラスチックのカバーをするんです。ただ「時代の先をゆくエアラインとして、プラスチックは使いたくない」と言われまして……。
五木田:いろいろな機内販売品を製作させていただいていますが、ZIPAIRとしてSDGsへの取り組みは命題と考えています。
まだ100%ではありませんが、なんとかそこに近づけていきたいと努力しているところです。サプライヤーさまには無理難題を申し上げていることは重々承知ですが、私自身も勉強させていただきながらご協力をいただいています。
前田:まだ3個入りだったのでなんとかなりましたけど、いずれは12個入りも作りたいとお聞きした時はちょっと困りました(笑)
“いかにエアラインらしくない商品を作るか”への挑戦。
―パッケージがとてもスタイリッシュで、一見アクセサリーが入っているのかと思いました。
五木田:ロゴや制服などを手がけていただいたSIXさんにデザインしていただいたのですが、多くのLCCに抱かれるポップな印象ではなく、ZIPAIRのシックなイメージに沿うようにしました。
前田:このグレーやグリーンがなかなか理想的な色にならなかったのを思い出しました。
五木田:コーポレートカラーを採用しているのですが、印刷ではこれが思うような色が出ないんです。何度もやり直しましたね。
―そこまでこだわり抜く理由はなんでしょう。
五木田:単なるお土産品にしたくなかったんです。極端にいえば、このチョコレートを買うことが目的で、飛行機に乗ってもらえるような機内販売品にしたかった。
ZIPAIRは新しい会社として、エアラインらしくないことにもどんどん挑戦していきます。その1つに考えているのが「これが欲しいからZIPAIRに乗る」と思っていただけるような商品を開発すること。「そういえば、これを販売しているのってエアラインなんだよね」という風にエアラインとしてのイメージが後付けになるような。機内販売品は「飛行機と同じぐらい主役であると思っていただけるように」との想いで作っているんです。
前田:いずれたくさんの方に食べていただける日が来ることを願っています。たくさんの想いが詰まったこのチョコレートが、旅に華を添えられるような存在になって欲しいです。