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今思えばがむしゃら。だからこそ、充実した時間だった。~就航から1年を振り返って・パイロット編~

こんにちは。ZIPAIR note編集部です。

2020年10月の旅客便就航から1年を迎えたZIPAIR。これまで客室乗務員、マーケティング担当が歩んだ道を振り返ってきました。

最後に迎えるのは、お客さまを乗せた初便で機長を務めた吉澤賢一さん。逆境をどう乗り越えてきたのか、そしてZIPAIRの未来へ向けてどう進んでいくのかを聞きました。

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プロフィール/吉澤賢一【写真・右】
1981年にJAL(日本航空)に入社。長年機長を務め、安全推進部の室長や乗員部長など、数々の役職を歴任。2018年よりZIPAIR Tokyoの取締役に。飛行訓練教官、安全統括管理者として服務する。

何もかもが初めて。とにかく必死だった。

私がZIPAIRの立ち上げを進める部署に来た時、メンバーはまだわずか9人でした。それが2018年。就航予定からたった2年前のことです。その段階から2020年の運航を目指すわけですから、それはそれはハードな日々が続きました。

航空業界に身を置いてからこれまでさまざまな業務に就かせていただきましたが、新たなエアラインを一から作り上げた経験などありません。「不安しかなかった」というのが、あの時の正直な気持ちです。

最も不安に思っていたのが、パイロットの確保でした。当時は世界的なパイロット不足でしたから。養成においても、就航日から逆算して規定類の認可や訓練・審査などのスケジュールを立てるのですが、これがまったく余裕のない日程だったんです。教官も2人しかいなかったため、もし1人でもインフルエンザにかかっていたら就航日までに間に合いませんでした。

結果的には訓練計画を滞りなく進めることができ、養成を無事に終えられた時はほっと胸をなでおろしました。

とにかくみんな必死でした。でも、今考えるととても充実した時間を過ごさせていただいたと思っています。あの時ほどがむしゃらになれたことって、人生の中でなかったように思います。

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困難な時を経て迎えた就航当日、機長として行った一つのセレモニー。

そうしたなか突如訪れたコロナ禍。4月に緊急事態宣言が出され、当初5月に予定していた就航日も後ろ倒しになりました。

世界中の誰もが経験したことのない危機に直面し、呆然としました。もはや私たちだけでどうにかできる状況ではありませんでしたから。

でも、だからこそ前向きになろうと気持ちを切り替えるように努力をしました。6月からは貨物専用便として運航することになったんです。ただ、客室乗務員は自宅待機の時間が多くなり、大変辛い状況だったと思います。

それから4カ月。ようやく迎えたお客さまを乗せての就航。まさしく待望の日でした。

当日のブリーフィングでは“感無量”という言葉が出てきたのを覚えています。苦労を共にしてきた仲間たちの顔を見て、自然と出てきました。「やっとこの日を迎えられたね」と。

ただ、あまり気負いすぎるとミスが出ると思ったのでそれ以上は言及せず、平静を取り戻しました。クルーたちの顔を見た時、喜びと同時に緊張の色が見えたので。また、通常業務に加えて感染症対策もありましたから。あくまで安全・安心が第一です。

そんななか、実は一つだけ機長として、この日を迎えたことに対するセレモニーをさせていただきました。それが、飛び立つ際に見せた“ロックウイング”。

離陸後に飛行機の翼を左右に振りながら上昇していくのですが、これはパイロットの慣習で、地上で見送ってくれている人たちに向けた挨拶です。「行ってきます」や「ありがとう」という意味があります。当日は関係者の皆さまや本来は休みだったスタッフなど多くの方に見送っていただきましたから、どうしても感謝の気持ちを表したかったのです。

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出発前にご搭乗いただいたお客さまに許可をいただきに伺ったのですが、とても快いお返事をいただいたのを覚えています。


個性がこれからのZIPAIRを作っていく。

あれから1年が過ぎようとしています。

この間に、たとえ暗闇であっても明るい展望を持ち続けることの大切さを学びました。諦めたらそれこそが失敗なのだと。確かにまだまだ困難な日々が続きますが、いずれ収束する時に備えて安全と安心を追求し続けるのみです。

今までは、人数も事業も会社としては小さな規模でやってきました。だからこそ細かい部分まで皆に伝播でき、共有できたといえます。これからもっと大きく成長するなかでも、私たち社員同士の距離感を保ち、どうやって密に連携していくかが重要になってきます。

とはいえ、全体への浸透を目指すあまり画一的になることは避けたいと思っています。

私はクルーたちにいつも「サービス面ではマニュアルに縛られ過ぎるな」と言っています。安全への影響がないことを大前提に、お客さまに価値と感動を与えられることを個々が考え、工夫する。それが未来のZIPAIRを作っていくと思っているからです。吉澤さん_03_加工_トリミング

最後に、エアラインとして最も大切なことは安全・安心です。

安全は私たちが負う義務、安心はお客さまに感じていただくもの。例えば、万が一飛行中に2つあるエンジンのうち1つが止まっても、訓練を十分に受けたパイロットは難なく飛行機を飛ばし続けることが可能です。でもお客さまにとっては決して安心できる状況ではありません。

その時に、パイロットも客室乗務員も、そして地上で接する社員も、すべてのスタッフが一丸となって安心していただくための信頼を得ることが重要です。機長によるアナウンスもその一つですね。

パイロットってお客さまからするとやっぱり少し遠い存在に思えませんか? でも、アナウンスも話し方や内容といった工夫次第で、お客さまとの距離を縮めることができるのではないかと。

そう思って、実は初便の時にアナウンスで「本日の客室乗務員は、とても愛想が良いですが実は怖い人が混じっていますのでお気をつけください」と言ったら、お客さまには一応笑ってもらえたみたいですがあとで客室乗務員から怒られてしまいました(笑)

新型コロナウイルス感染症が収束したら、どこに行ってみたいかですか?と聞かれたら……う〜ん、ZIPAIRにお客さまとして搭乗してハワイに行ってみたいですね。客室乗務員からしたら、やりづらいと思われるかもしれませんが(笑)

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